「酒井の現代文ミラクルアイランド」を読む。

 本書、「酒井の現代文ミラクルアイランド」は代ゼミ講師の酒井先生の現代文評論の参考書である。私が大学受験生であった頃にお世話になった本だ。何故、今この本を読んでいるのかというと、一昨日本棚を整理していたら本書が出てきて、ついあの頃に戻りたいと思い、また自身の読解力を鍛えなおすのも有益であると思ったからだ。読み直してはいるが、問題を解くのは負担が過大である為、解説部分のみの通読ではあるが。

 本書について私が思うところをいくつか述べる。まず、本書は早稲田大学対策に特化しているとの書評を目にするが、そうではないと思う。本書は、酒井先生の文章の読み方を伝授するだけの本であり、早大の受験対策に特化されている内容ではない。文章の難易を問わず、どのような文章でも読んで解るようになることを目指している。そのような評価がされるのは本書がそのような内容を扱っているからではなく、他に早大のような現代文の試験が難しい大学の問題のレベルに対応できる参考書がないからであると思う。現代文が苦手であるのなら早大現代文或いはそれに類する問題を課さない大学が志望校であっても手に取る価値があると思う。また、本書は二項対立を意識した内容となっており、掲載問題はそれが使われているものになっている。それゆえ、本書では二項対立という概念を用いたのでは太刀打ち出来ない文章を読めるようにはならないと指摘する者がいるが、その批判は的外れであると思われる。本書は文章を論理的に読むことを主眼としており、二項対立を明確にすることは論理を意識して読み解いた結果に過ぎない。酒井先生の言う「わける」と「つなげる」は必要に応じてすれば良いだけであるし、必ずしも「わけた」結果が二つになるとは限らない。適宜論理を辿っていけば、仮に二項対立では説明できない文章であっても十分太刀打ちできるのだ。

 本書はお勧めの一冊である。大学受験生以外でも読む価値がある書籍であると思う。ただ、酒井先生は左翼と言われており、本書にもそのような思想を感じる記述がある為、それでも良い方にしかお勧めできないが。